現地Staffの声

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現地スタッフからのレポートです。

予防整備と故障整備

野田幹雄

JDRACが自動車整備士の養成教育をはじめた東チモールの首都ディリ。ここは昭和30年代初期の日本の地方都市に突然大量の中古車を持ち込んだような都市です。走行している車のなかには一見して整備不良車と分かる車が散見される。特に市民の移動手段となっているバイクにはバックミラーがほとんど付いていない。日が暮れると更に状況がはっきりする。外灯のほとんどない道路を多くの無灯火のバイク、四輪車が走っている。バイクだと思っていると近かずいてきて突然片目の乗用車と分かり肝をひやすことがしばしばあります。このような状況でも整備不良車の取り締まりを実施しているところは見たことがありません。
この国では多くの人は自動車には燃料だけを補給して故障するまで、いや故障しても走行できれば走行できなくなるまで使うという考えがあるのではないかと思うくらいです。

このような環境のなかでJDRACは一般市民の啓蒙策として、整備不良に起因する事故の未然防止と車両寿命の延長を目的とした車両の「日常点検」(予防整備)普及活動を実施しています。また自動車整備士養成教育においては12ヶ月点検、24ヶ月点検等を基準とした予防整備に力点をおいた教育を実施しています。これらの点検の正しい実施により故障には至らないが使用限度、交換限度にあるユニット、パーツをみつけだしそれを交換することにより故障を未然に防止するとともにより大きな故障への拡大を防ぐ整備です。
しかしながら上記の環境から整備工場には故障車しか入らず(故障整備)整備=分解・組立という考えが浸透しているこの国の研修生に予防整備に力点をおいた教育の重要性を理解させるのは容易ではありません。
今この国では5年以上の中古車の輸入は禁止されています。また車検制度及び自動車整備士教育基準等の制定の準備をしています。チモール海の石油・天然ガスのもたらす経済的な富とあいまって、早晩この国の自動車事情も整備され我々の教育が理解されると信じています。

2011年8月1日