会員の声

会員の声

オールド・ソルジャーたち

顧問 北原巌男

司馬遼太郎さんの著書「坂の上の雲」は、こんな文言で始まっています。
「まことに小さな国が、開花期をむかえようとしている」
――――21世紀最初の独立国でありアジアで一番新しい国。その国土面積・人口はともに岩手県ほどの国東ティモールは、今、平和の中であの「坂の上の雲」をめざして国づくりの真っ只中にあります。
私たち日本人にとって、東ティモールは未だ馴染みの薄い国です。また独立回復闘争時などのニュース映像のすさまじさもあり、残念ながら今なおネガティブなイメージを払拭することは出来ていません。
しかし、現実は全く異なります。治安は安定し平和です。
2012年末をもって国連統治機構は全て撤収しました。人々は自立し、平和の中でより良い生活を営めるよう国づくりに取り組んでいます。
国づくりは人づくりでもあります。教育、人材育成は最重要の緊喫の課題です。
「教育なくして未来なし。未来なくして国なし」
かつて「坂の上の雲」の時代の日本がそうであったように、多くの東ティモールの若者たちが外国に行き学んでいます。
未来志向の関係を確立したインドネシアには、現在約7000名が留学しています。
数はすくないですが、日本にも来ています。中には、東ティモール人として日本の大学から初めて博士の学位を取得した者、防衛大学校史上初めての女性留学生となった者もいます。
留学生たちが母国東ティモールの発展を担う若き逸材として活躍することを願って止みません。他方、諸外国から東ティモールに来て国づくりや人づくりに尽力している皆さんも日本人を含め沢山います。
そんな日本人の中で、特に若い在留邦人の驚嘆の的となって来たのがダントツ年長組の面々です。いづれもが人間的魅力に溢れ、しかも無尽のバイタリティと情熱の持ち主。自衛隊で培った知識・技能の全て、スピリッツの全てを東ティモールの若者たちに伝え、自分のものにしてもらうんだという夢と信念を抱いて全身汗だくになって取り組んで来ました。大変な中にも、何かとても楽しそうな面々。それがJDRACのオールド・ソルジャーの皆さんです。
初代理事長の平崎さん、副理事長の平尾さんはじめ、多くの個性的なメンバーの笑顔が浮かんで来ます。東ティモールの“独立の父”シャナナ・グスマン前首相もその尽力に心からの感謝の気持を表明されています。
そして今、久光理事長、加藤副理事長等にバトンがタッチされ、現地では村田代表がスタッフの皆さんと一緒に頑張っています。

本年6月9~10日に東ティモールを14年ぶりに再訪された中谷防衛大臣は、直接村田代表に会われました。
同大臣は、村田代表の手をしっかり握り、これまでのJDRACの活動と努力に深甚なる敬意と感謝を表明すると共に強く激励されました。
JDARCは、これからも東京の本部と現地が一体となって東ティモールの国づくり、人づくり支援に取り組んで行くことでしょう。
開花期をむかえようとしているまことに小さな国東ティモールで奮闘を続けるオールド・ソルジャーたち。
日本の多くの皆様、JDRACの会員の皆様には、これからも彼らの背中を力いっぱい押していただきたいと思います。

2016年7月7日