建設機械の整備点検研修の現場を木村徹也大使が訪れ、活動を視察してくださいました。現場は、首都のディリ県から西へ車で1時間半ほど山道を走り、リキサ県の山の中腹です。シュロやハイビスカスの花などで彩られた歓迎の飾りとともに、地元の小中学生や村の長老らが伝統的な儀式と踊りで大使をお迎えしました。
実は前日の昼、村の人たちが大歓迎の催しを考えていることを聞いた私たちは、限られた訪問時間への対応に奔走しました。おかげさまで、当日は予定通り、地方での活動現場と首都ディリにある公共事業省資機材局(IGEADI)事務所の2か所を見ていただき、無事に日程をこなすことができました。
東ティモールでの大型自動車整備士および建設機械整備士・オペレーター養成事業(2020年3月~23年6月)は日本NGO連携無償資金協力で展開しており、現在の3年次で現場巡回研修を実施してきました。これは、2年次に学んだ建設機械の整備に必要な基本知識と技術を基礎に、全国各地の作業現場に配置されている機械を使って点検・修理の実践力を強化する研修です。油圧ショベルやブルドーザーなど全国5県で計21台の各種機械を確認しました。僻地の村で故障して動かなくなっていた機械を、見事に再稼働させることができたケースもあります。本事業の研修を通じて必要な交換部品を選定し、研修生の整備士(IGEADI所属)が直ちに部品と工具を持って現場に戻り、修理に取り組んだ成果です。
事業終盤となり、こうした経過を日本大使館にご報告したところ、今回の木村大使による活動視察が実現しました。
リキサ県での現場視察では、安全第一をモットーに、元気よく「GOANZENNI!(ご安全に)」といつもの挨拶で作業を始める様子や、不具合を見つける「機械点検シート」、現場で不具合箇所の詳細確認に活用する「整備情報タブレット」、整備士が溶接して作成した、オイルへの不純物の混入を防ぐ「ドラム缶保管台」などを見ていただきました。ディリ県のIGEADI事務所に戻り、部品倉庫の在庫を見える化した手作りの「部品管理箱」や整理棚を前に、大使と職員が意見交換をする場面もありました。
これらはいずれも、全国の僻地で道路の建設や補修を担うIGEADIが、作業に使う各種機械の整備修理で直面している課題を現場レベルで改善していくために、日本人教官2人と研修生の整備士、IGEADI職員らと協働して考え、つくったものです。先日も整備士が「機械点検シート」を他のトラックを点検するために自ら進んで活用している姿が見受けられました。
JDRACは、公共事業省のIGEADI(Institutu Jestaun Ekipamentu no Apoiu ba Dezenvolvimentu Infraestrutura)により、現地技術者を対象に能力向上プログラムを実施しています。これにより、国の重機が十分に機能するための技術者スタッフの能力が向上し、インフラ整備が円滑に進むことが期待されます。
木村大使は、JDRAC – IGEADIプロジェクトの現場を視察するため、リキサ州マウバラ県ググルール村を訪問しました。また、ディリにあるIGEADI本部も訪問し、ワークショップの様子を見学しました。
2023年3月30日、木村大使が、リクイサ市マウバラ行政区ググルール村のJDRAC – IGEADIプロジェクトサイトを訪問しました。地元住民に温かく迎えられ、プロジェクトの現状を確認しました。
地域住民との関わり。
大使からは、「今後も技術や知識を東ティモールの発展に役立ててほしい。人と人のつながり、継続が大切です。皆さんを応援しています」と力強くお話ししてくださいました。大使が自己紹介を現地語ではじめた時には、緊張していた村の人たちの顔がいっきにほころびました。村長からはテベダイという団結の踊りの輪に誘われたり、最後に写真撮影が延々と続いたりするなど、草の根交流のような現場活動の視察は、研修生や私たちにとって心の温まる、また励まされるものでした。
このような機会をいただきましたことを、心から深く感謝申し上げます。
JDRAC東ティモール事務所 現地代表 吉森 悠